もじゃもじゃな人の雑記

当方は高専生でしたが今は腐れ大学生.今後は日記および備忘録として動きます.

協力の進化のまとめ その1

協力の進化に興味を持ってるので,今後はそれについて説明していけたらなと思ってます.

というモチベーションで書いてたけど1回にまとめようと思うと時間かかるし長いので分割していく予定です.

今回はイントロとなる問題設定について書きます.

序文:協力と裏切り

卑しい話になりますが,皆さんは道端に誰かの財布が落ちていたらどうしますか?拾って自分のポケットに入れますか?交番に届けますか?

またはその財布が,目の前にいる友人がついさっき落としたものだと知っている場合はどうなるでしょうか?

何なら,現在デート中で己の行動を恋人が見ているような状況を考えてもいいでしょう.

こういった状況において,財布を交番あるいは持ち主に届ける行為は「協力的」で,それと逆の行為は「裏切り」と表現することができるでしょう.


さて,多くの人は協力的な行動をとるのかなと予想しますが,逆に裏切りの行動を頭に思い浮かべもしない人はいないのではないかと個人的には思います.

その場合人は自然に「協力」を裏切りより優先しているとみなすことができるでしょう.

その他のことを考えてみても,僕たちの社会に協力は多く存在します.

しかし,この事実は科学的には簡単に説明できないことなのです.

それこそが「社会的ジレンマ」と呼ばれるものであり,今回から説明していきたい「協力の進化」の下地となる問題です.



ゲーム理論

先ほど社会的ジレンマという言葉を出しましたが,それの説明をするためにまずゲーム理論囚人のジレンマについて簡単に書いていきます.

ゲーム理論は人の意思決定(decision-making)の問題を数学的なモデルを用いて研究する学問です[1].

ゲーム理論では,(プレイヤー)がいくつかの戦略(すなわち行動の選択肢)を持っており,そこから1つ選んで行動すると,それに対して利得を得ることができる,という風に人をモデル化します.

また,ゲーム理論では人が非常に合理的であり(曖昧な判断基準は持たない),自分の利得が大きくなる選択肢を取ろうとするという仮定を置くことがよくあります.


ここでは簡単のため,人は協力と裏切りの2つの戦略を持ち,それが2人いると考えます.名前はAさんとBさんにしておきましょう.

さて,AもBも協力か裏切りかを選択することができるわけですが,2人の選び方で得られる利得が違ってくる状況を考えましょう.その場合の利得を下の利得表と呼ばれるもので示します.(Aの利得, Bの利得)のように見ます.

A\B 協力 裏切り
協力 (R, R) (S, T)
裏切り (T, S) (P, P)

$R,S,T,P$は任意の数値が入ります.

このように,例えば(Aの戦略,Bの戦略)が(協力,協力)か(裏切り,裏切り)かで利得が違ってくる可能性があることが見て取れます.

次の囚人のジレンマで実際にこの表に数値を当てはめて解析してみます.



囚人のジレンマ

有名な囚人のジレンマとは以下のような利得表の状況で起こってしまうジレンマです.

A\B 協力 裏切り
協力 (3,3) (0,5)
裏切り (5,0) (1,1)

このときあなたがAさんなら協力か裏切りかどちらを選びますか?


ここでプレイヤーはより利得が高い方を選択するという仮定を考えます.

その仮定の上では,相手の行動も考慮した場合,最終的にはどちらのプレイヤーも裏切りを選択した方が良いという結論をすることになり,裏切りを選びます(詳しくは[2]を参照).

しかし,よくよく利得表を見ると互いに裏切ることは2人の社会において,総利得を2しか与えません.

もし社会的な利得を最大にしたければ互いに協力をするのが一番いいのは一目瞭然で,その場合は6が得られます.

社会全体としては互いに協力をしたいのに,各プレイヤーが利得の大きい方を選ぼうと考えたときその行動は裏切りに偏ってしまう.こういったジレンマがこの場合は起こってしまうのです.



社会的ジレンマ

こういった構造のジレンマは実際の社会でも考えることができます.

例えば,税金を払う場合のジレンマがあります(参考:[3]).

住民が税金を払うか払わないかを考えたとき(それぞれ協力と裏切りに対応),払わない者が多いと増税されるとします.なお払ってないと時々バレます.

そうすると真面目に払う人も多くいるのでしょうが,一部はそういった真面目な人に任せっきりにして支払いを放棄することも考えられます.

そうした不真面目な人が増えると結局税金が増えて,社会として良くない状態に陥ってしまいます.

これが社会的ジレンマの例です.


ここで仮に払わなくてもバレない場合を考えるとどうなるでしょうか?

最終的には誰も払わなくなることが予想できます.

これぞ協力の絶滅です.

そんなことでは政府が困ってしまいますね.



どうすれば協力が生き残るか?

しかし実際は協力が完全に絶滅することはほとんどないでしょう.

大抵みんな協力をします.ですがそれはなぜでしょうか?

何か特別なルールが影響しているのか?

人の意思決定にはまだ考慮していない特徴があるのか?

意思決定を繰り返すと何か変化は起きるのか?

などなど色々な要素を考えて,「どうすれば協力が生き残るのか?」について議論をするのが,今回紹介するテーマの根幹になります.


その辺についてよくまとまっているレビュー[4]を現在読み進めているので,今後もそれを参考にしつつ自分なりのまとめを書いていく所存です.

というわけで今回はここまで.次回から協力の進化の謎に迫る!(大言壮語)



参考文献

  1. Wikipediaゲーム理論https://ja.wikipedia.org/wiki/ゲーム理論
  2. Wikipedia囚人のジレンマhttps://ja.wikipedia.org/wiki/囚人のジレンマ
  3. Wikipedia社会的ジレンマhttps://ja.wikipedia.org/wiki/社会的ジレンマ
  4. David G. Rand,Martin A. Nowak(2013),Human cooperation,Trends in Cognitive Science,Vol. 17,No. 8(リンクはここ