昨日の流れに乗る形で,今日はTwitterでの意見の拡散研究.
論文はこれ.
タイトルを日本語訳すると「政治コミュニティにおけるツイートの持つ印象の遷移;反転した意見の現象」
ただ,一通り読んだ今でも "sentiment" の日本語訳に悩んでいる.
「(ツイートが言及してる対象への)感情」の方が個人的に当てはまりが良い場合も多い気がする. 例えば現政権への「好意的なツイート」と「否定的なツイート」があったとして,それらはユーザーの持つ現政権への "sentiment" の観点からいうと対極にある,という文脈の場合「印象」がいいか「感情」が良いか.
まあ喜怒哀楽を表す感情と区別するために "sentiment"=「印象」としておく.この辺の文章は自分の中で折り合いが付いたら全体的に統一した後消す可能性がある.なのでこの辺は読まなくて大丈夫.
何はともあれ,内容を軽く紹介したい.
概要
- Twitterの引用リツイートに注目したサーベイ論文
- 引用によって元ツイートと異なる印象の意見(反対意見など)を拡散するものは,引用全体の41%
- ツイート対象への印象(の極性及びその大小)が意見逆転現象が起こる主な要因
- 強い正の印象を持つツイートが最も拡散されるが,同時に逆転現象も起こしてしまうため総合的な影響としてはイマイチ
箇条書きするとこんな感じ.
昨日上げた記事で,「フェイクニュースは意見の近い人しか拡散しようとしない」というサーベイ結果が出ていたけど,Twitterなら引用リツイートでさんざんに否定しつつ拡散したりするよな~と思って調べたら出てきた.
無いなら自分でサーベイしたかったけど,やっぱりあった.まあ読んでると大変そうな作業だったので,先にやっていてくれてありがたかったかもしれない.
主要な結果の詳細
引用による意見逆転現象
これはさっき言った,引用リツイートによって元ツイートの内容と反対の意見だったり,あるいは偏った意見を中立に戻したりする現象のこと.
調査によって,引用全体の41%でそういった現象が起こっていたらしい.個人的には思ったより多い.
ツイート対象への印象が主な要因
著者らは,元ツイートに対して引用ツイートが生まれるのは何が要因なのかを調査していた.
要因の候補は,ツイート内容に関わるものとして「(対象への)印象,ハッシュタグの有無,感情」など,ツイート主に関わるものとしてプロフィール欄など,あとツイート主の活動としていいね数などが挙げられた.
それらの影響を調べるために重回帰やランダムフォレストなどを使ったところ,どのモデルでもツイート内容の「印象」が主要な要因であるという結果を示した.
拡散と逆転現象
最後に,拡散する広さと逆転現象の起こりやすさにより,結果的にどれほどの影響をSNS上に及ぼせたかを調査している.
影響は,正の印象を持つツイートが拡散されるほど影響としての値が増加し,負の印象を持つツイートが増えるほど減少する.
したがって影響の値が大きいほど,そのツイート対象を支持する派閥としては良い結果となり,小さいほど反対派にとって良い結果となる.
結果的に,強い正の印象を持つツイートが最も拡散されやすいが,同時に逆転現象も起こしやすく,影響の値がそれほど高くならなかった.
影響の値が一番高くなったのは弱い正の印象を持つツイートのときであり,逆に一番低くなったのは弱い負の印象を持つツイートのときだった.
まとめ
結局,あんまり過激なこと言っても全体的に良い結果にはなりませんよ,というのは重要な知見だと思う.
でも強い感情ほど拡散するという研究はこれまでにもされているので,印象を度外視した炎上商法はやはり有効なんだろうなあということも再確認した.
というわけで連続してSNSでの研究を読んだ感じです.
なかなか興味深いし,いろいろアイデアもたまったので読んで良かったというのが私の小学生並みの感想.
次は昨日から読んでるけど若干挫折気味の,再びになるゲーム理論の話題になりそう.